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第217話 我戦う。故に我あり

ผู้เขียน: 雨音休
last update วันที่เผยแพร่: 2026-10-29 06:03:04

「これで終わりだ!」

 こちらに向かってテレサが走って来ている。テレサにまたがっている黒騎士が槍を振り上げた。トドメの一撃を繰り出すつもりのようだ。キャルル丸の心を絶望がむしばむ。

 夜月しか勝たん:テレサは最高のダークホースですよw

 キャルル丸の世話係:動いてキャルル丸!

 溶けた50万:……死んだな。

 地面に転がっているキャルル丸が顔を上げる。

 残りHPはあと一メモリだった。

 口の中に土が入ってしまったようで、じゃりじゃりとした。

(ちくしょう、死んでしまう)

 その時キャルル丸の脳裏に浮かんだのは、

 どうしてかニキの顔であり。

「キャルル丸、立てよっ!」

 観客席から、主人の声が大きく響き渡った。

 こんな自分を心から愛してくれた。

 時には叱ってくれて、

 時には慰めてくれた。

 いつも隣にいてくれる存在。

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    「これで終わりだ!」 こちらに向かってテレサが走って来ている。テレサにまたがっている黒騎士が槍を振り上げた。トドメの一撃を繰り出すつもりのようだ。キャルル丸の心を絶望がむしばむ。 夜月しか勝たん:テレサは最高のダークホースですよw キャルル丸の世話係:動いてキャルル丸! 溶けた50万:……死んだな。 地面に転がっているキャルル丸が顔を上げる。 残りHPはあと一メモリだった。 口の中に土が入ってしまったようで、じゃりじゃりとした。(ちくしょう、死んでしまう) その時キャルル丸の脳裏に浮かんだのは、 どうしてかニキの顔であり。「キャルル丸、立てよっ!」 観客席から、主人の声が大きく響き渡った。 こんな自分を心から愛してくれた。 時には叱ってくれて、 時には慰めてくれた。 いつも隣にいてくれる存在。 優しい、 優しい主人。 彼の期待に応えたい。 テレサの姿が眼前にあった。馬上の黒騎士がキャルル丸に向けて槍を振り下ろす。(動け、我の身体!) 動け! キャルル丸の顔が勇敢に引き締まった。「キャルルアアアッ!」(ルミナスウイングッ!) キャルル丸の背中に白く輝く翼が広がる。勢いよく飛び立った。敵の槍を回避して、素早く移動する。テレサの後ろに降り立った。 黒騎士の槍が空を切り裂く。 テレサがつまらなさそうな態度で身体を旋回させた。「貧血のキャルル丸よ、まだそんな力が残っていたか」 キャルル丸はぜいぜいと息をついていた。 やがて、背中のルミナスウイングが消える。 目を尖らせてにらみつけた。「きゃるるっ」(我は、我は負ける訳にはいかないのだ)「ぶははっ、強がりは口だけにしておけよ。お前はあと一撃で死ぬ」「きゃるるっ」

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    「ぶるるぅ」(キャルル丸、お前を食ってやる)「きゃるるぅ」(我を食うだと?) 円形闘技場の試合場では、もう一つの準決勝が行われていた。 キャルル丸とテレサが一定の距離を置いて、にらみ合っている。お互いに油断の無い顔つきだ。目の前のテレサの鼻の穴がやけにでかい。かなり下品な顔立ちだとキャルル丸は思った。その鼻の穴がせせら笑うようにひくひくと動いている。:どっちが勝つんだろ。:夜月さんのテレサが負けるはずがない!:キャルル丸ちゃん、黒馬をやっつけちゃえ! 観客席からは仲間たちの応援の声が響いていた。だけどその声は、キャルル丸の耳に残らない。耳に入るのはどうしてか、エリザの声だけだった。 エリザが声援を放つ。「キャルル丸! 頑張りなさいよ!」「きゃるる!」(任せておけ、エリザ!) 先ほどの試合でエリザはクロガネを八つ裂きにしていた。胸がすく思いだった。エリザはクロガネのことを好きでは無かったのである。これで自分にも可能性ができた。この試合で、格好良いところを見せつけなければいけない。(エリザをメロメロにしてやる!) その時、テレサが唱えた。「ぶるる」(ステータスオープン) 黒馬の眼前に、水色の画面が現われる。「……きゃるる」(お前、何をするつもりだ?)「ぶるるぅ」(実はな。お前にプレゼントをやろう) テレサは口を上手に使い、アイテム欄から大きな木の実をくわえて取りだした。地面に木の実をぼとりと落とす。 キャルル丸は鼻筋にしわを寄せて尋ねた。「きゃるる?」(それは何だ?)「ぶるるるぅっ」(これは知恵の実と言ってな。食べれば、乗り物でも人語を話せるようになるアイテムだ)「きゃるっ?」(な、何だと? くれるのか?)「ぶひゅるるっ」(ああ、キャルル丸。お前にやるぞ。さあ、こっちへ来い)「きゃるー」(くそっ、どうせ罠だろうが)「ぶっひゅるるー」(罠じゃない

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     準決勝のゴングが鳴る。 円形試合場の地面の上、エリザとクロガネはにらみ合っていた。「ねえクロガネ様ん、いっぱいサービスしたんだから、勝利を譲ってくれないかしら?」「……きしゅーっ」(……いいぞ、こっちへ来い) クロガネが割れた舌をちろちろと出し入れする。 気味が悪かった。(……こっちへ来いって、どういうことよ) ピンク色の竜と黒い大蛇の間には、ただならぬ緊張感が流れている。 ちなみに、エリザは配信をしていない。 観客たちは固唾を飲んで見つめていた。右斜め上にはキャルル丸の姿も見えた。フェンスの前で、エリザとクロガネの試合を注視している。 エリザがまた喋った。「クロガネ様、こっちへ来いってどういうことん? 棄権して欲しいのだけれど」「きしゅーっ、きしゅぅぅ」(分かった、棄権してやろう。こっちへ来い)「その場で棄権を宣言すればいいんじゃないかしら?」「きしゃー、きしゅぅぅ」(ちょっと喉が痛えんだ。エリザ、喉をさすってくれ)「喉が痛い? ……分かったわ」 エリザが歩き出す。どしどしと足音が鳴った。 太陽はちょうど空の真上にあった。日差しが地面をじりじりと照りつけている。草一つ生えていない黄土色だった。いくつもの試合が行われたせいで、地面はところどころ荒れている。壁にも壊れている箇所があった。 エリザはクロガネに近づくと右手を伸ばした。その手にはスカーレットクローがはまっている。エリザは困ったようにこぼした。「クロガネ様ん、爪があって、お喉を上手に撫でられないわ」「きしゅー」(では、爪をはずしたらどうだ?)「ダメよ。一人じゃはずせないわ」「……きしゅぅぅ」(そうかそうか) 観客席からキャルル丸の鋭い声が飛んだ。「きゃるるぅっ」(エリザ、罠だ!)

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     人気SNSサイトZeebにて、ユーザー名『アランクルスの裁縫職人晴恋』はゲームのスキンカードを売っていた。 Aランク、白銀の騎士団長、45万ヴァル。 Bランク、レザーで編まれた軽装鎧、20万ヴァル。 Cランク、カジュアルジャケット&ジーンズ、10万ヴァル。 スキンは男女兼用だった。 下着もある。 Aランク、プリンセスズシークレット、50万ヴァル。 Bランク、ハッピーバレンタイン、30万ヴァル。 購入希望者はDMにて、お待ちしております。 いま、準決勝戦前の休憩だった。長引いた試合がいくつかあり、12時を回っている。 静岡のログネストで、晴夏は昼食を摂りながらスマホをいじっていた。狭いマットルームである。室内は冷房が効いており、涼しかった。注文したスジコおにぎりと唐揚げ、シーザーサラダをつまみながらスマホをいじる。開いているZeebのマイページには、今日もお客さんからのDMが来ている。お客さんは二人いて、一人目はレザーで編まれた軽装鎧、二人目はハッピーバレンタインを欲しいようだ。(くぷぷ、また売れました) 晴夏は文字を打つ。取引の約束と、待ち合わせの時間と場所を尋ねる文章を作って返信した。 二つ合わせて50万ヴァルの売値だ。だけど儲けは50万ヴァルでは無い。裁縫のミニゲームに挑戦するための素材費用が高いせいだった。 それでもかなりの儲けが出ている。 ゲーム内の晴夏のレベルは、この間30を越えた。20レベルから30レベルに上がるためには1200万ヴァルほどかかることが判明した。30レベルになったことにより、超越スキル、ダークナイトを覚えている。この事は、みんなにはまだ秘密にしてある。(くぷぷぷ、もっともっと稼ぎたいです) 以前に撮った、お客さんがスキンを着て笑顔でピースをしている写真があった。その写真をアップロードして、Zeebに投稿する。掲載許可はもらってある。お買い上げ誠にありがとうございます、とコメントを添えた。 今夜もニキと別れた後で、宿屋に行かなければいけな

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    :キャルル丸ぅぅ、頑張れぇぇ!:一生懸命ダイエットしたのに全然やせてないw:馬鹿よく見ろ、腹が縮んでるぞ。ほんのちょっとだけなw キャルル丸の初戦が始まろうとしていた。 いま試合場では、キャルル丸とミリッサが距離を置いてにらみ合っている。(ちくしょう、腹が重くて仕方無い) キャルル丸は顔をしかめた。その腹は大きく膨らんだままだ。まるで妊婦である。ずっと走っていたせいで、キャルル丸の身体は汗だくだった。ちょっと汗臭い。 観客席ではウミとアイギスがフェンスを握って応援していた。ウミの隣にはどうしてかエリザもいる。エリザが「キャルル丸ー、勝ちなさいよー!」と声をかけてくれた。キャルル丸の耳に入るのはエリザの声だけだった。 エリザに向けて手を振る。「きゃるる、きゃるっ」(エリザ、見ていてくれ!) 試合場に風は入ってこない。太陽の日差しがじりじりと照りつけており、ミリッサは困った顔をしていた。どうやらこのウサギは、暑さに弱いようだ。一方キャルル丸は暑さに強い。だけどその事が、試合の命運を分ける訳では無さそうだった。 試合の始まりを待っている客たちが今か今かと足を踏みならしている。 審判長が拡声器を掲げた。「それでは、キャルル丸対ミリッサの試合、開始です!」 ゴングが鳴った。 キャルル丸は獰猛に口を開き、のっしのっしと動いた。走っているつもりだった。だけど身体がなまりのように重い。 ミリッサがニタニタと笑った。「ぷうぷう」(お前は亀よりも遅いね)「きゃるぅ」(何だと?)「ぷうぷうっ」(こっちだよ、デブ助) ミリッサが背中を向けて距離を取るように走る。「きゃるるっ」(待てこの野郎!) キャルル丸はどっしどっしと追いかけた。だけど足が遅い。これでは攻撃を繰り出す前に、近づくことすらできない。 ミリッサが唱えた。「ぷうっ」(キャロットファスト) ミリッサの頭上にニンジンのマークが灯る。

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第212話 ぎゃるるぅじゃないよ、もう!

    「おいおい、キャルル丸、太りすぎさ!」 ニキが責めるような口調で相棒の背中を撫でていた。 キャルル丸は弱ったような顔をしてうなだれる。発した声はいつもよりも低い。太りすぎたせいで重低音だった。「ぎゃるるぅ」「ぎゃるるぅじゃないよ、もう!」「ぎゃるぅ」「どうしてあのピンク色の竜のぶんのステーキまで食べたさ?」「ぎゃる、ぎゃるるぅ」「お前、こんな相撲取りみたいな身体つきで、戦えるのかよ?」「ぎゃる!」 キャルル丸は大丈夫だというふうに右手を振る。 ニキは深いため息をついた。(これじゃあ負けちまうさ):キャルル丸は終わりマスタ。:リログしても痩せないですよ。:……早くダイエットしなきゃ。:俺の50万ヴァルを返して。 円形闘技場の入り口前の地面に、グラスオースのメンバーは集まっていた。晴恋だけはいない。晴恋は試合を見張っており、キャルル丸の試合が近くなったら呼びに来てくれる手はずだ。 キャルル丸の初戦は三試合目である。 辺りに一般プレイヤーや乗り物はいない。ファストフードを売るNPCの露店だけがあった。円形闘技場では試合が始まっているようで、お客さんの歓声が響いてきていた。賭け事が熱狂しているようで、罵声まで飛んでいる。それを聞いて、ニキはイライラしたように眉間にしわを寄せた。 キャルル丸のぼよぼよとした腹を、ニキがわしづかみにする。「何だよこの情けない腹は! こんなに太ったら早く動けないさ。この馬鹿ちん!」「ぎゃるるぅ……」「みんながお前に50万ヴァルを賭けているんだぞ?」「ぎゃるぅ」「もうっ! ずんぐりむっくりになっちゃって!」「ぎゃる……」「おいニキさん、その辺にしておけ」 トウマがニキの肩にやんわりと手を置いた。 ニキが振

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第4話 ヴァルの村

     ゴーレムを倒し終えると、ノーファンの村へと二人は転移した。 辺りには木造りの民家が立ち並んでいる。遠くを見ると森や山があった。地面は土。その道路で、トウマとウミは隣り合って佇んでいた。 「普通の村だな」「そのようですね」「とりあえず、狩り場に行くついでに、村を見て回ってみるか」「はぁい!」  二人で並んで歩き出す。 すぐに他プレイヤーの姿があった。 横切っていく通行人。その顔色は明らかに沈んでいた。他にも座り込んでいる女性がいた。壁にもたれかかっている男。空を見上げている魔法使いふう。誰もが死んだ魚のような目をしている。 異変に気づいたウミが声をひそめてつぶやく。不安に揺れ

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第3話 排除

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     それは、どこにでもある小さな“シアワセ”だった。 朝。寝息を立てているユウマの肩に、妻が優しく手を置く。 「ユウマ、起きて起きて」「むにゃむにゃ、もっと寝てたい」「駄目。会社に行く時間よ」「ぐぐー、ん、朝?」  瞳を開く。目の前には妻の優しい笑顔があった。ユウマはダブルベッドから上半身を起こし、右手を口元に掲げて大あくびをする。 「ふわあ」「あら、大きなあくびですこと」「朝食は?」「出来ています。着替えて、ダイニングへ来てくださいな」「ああ、分かった」  クスッと笑って妻が部屋を出て行く。スリッパの足音が遠ざかって行った。 ユウマはベッドから出て支度をする。ワイシャ

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